商店街を歩いていたら、八百屋の店先で特大の文旦を発見!
と思ったら、文旦の一種には違いないけれど、これは「うちむらさき」という種類なんだそうだ。珍しそうに眺めていると、店の人がニコニコしながら近づいてきた。
「年配の人がなつかしがって、よく買っていくよ。塩をつけて食べるとおいしいき」
塩をつけて食べる? そういえば子どものころ、どうしようもなくすっぱい夏みかんに重曹をつけて食べた覚えがあるぞ。いや、あれはサッカリンだっけ(トシがばれる~)。
多分、これもそうとうすっぱいのだろう。それに皮をむいたら、中の実は、握りこぶしくらいの小さなものなのかもしれない。
思わず頭の中で、皮むき後の予想図と、400円という値段とを秤りにかける。(それほどおいしくもなさそうやし、やめとこ)と一度は思ったものの、結局好奇心に負けて買ってしまった。
家に帰って重さを計ると、なんと1.6kgもある。皮をむくのもよいしょ、こらしょという感じで、簡単にはむけない。
けれど、実は予想したより大きくて、中身だけで1kgもあった。
さて、肝心の味はというと、甘みはほとんどなく、酸味も、夏みかんほどすっぱくはない。果肉はしっかりしていて、ザクザクした食感だ。大味の特大夏みかんというところか。
全国市場に出て行くにはいかにも魅力がない果物だけれど、今どきの果物のようにやたらと甘くないその素朴さに、なんとなく心惹かれる。
だって、こういっちゃなんだけど、これって随分と時代遅れなフルーツだよねえ。それでも一生懸命作り続ける人がいて、これが店に並ぶのを楽しみにしている人がいるって、いいじゃなーい。
でも、早晩、作る人も食べる人も高齢化して、消えていくのでありましょう。残念!
ちなみに「うちむらさき」という名前は、果皮の内側がうすい紫色をしているところから、ついたのだという。
甘みはないけれど、それだけに後味がさっぱりしている時代遅れなこの「うちむらさき」。私は結構気に入っている。